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しかし、相手は、そんな事情を待ってくれない。
「ガジェット、展開‼」
彼女の周囲に、夥しい機械が浮遊する。
それらは、彼女の身体と一体化し、兵器化した。
全身に戦闘武装のようなものを装備した彼女は、拳を握り、構えを取った。
「私は戦う科学者です。」
その一言が、私やオヤの全神経に緊張を走らせた。
オヤが前に出る。
『これ以上、主様を傷つけさせやしません‼』
初手から、必殺を放つ。
それは、紛うことなく最強魔法。
精霊にのみ使用を許された、伝説の━━━
『〝テンカムソウ〟』
直後、あたり一面が光に照らされ、輝く黄金の刃が天から振り下ろされた。
私は思わず目を閉じ・・・・・・次開けたときには、ツォンの姿はどこにも見えなかった・・・・・・
だと、良かったのだが。
『⁉ 』
彼女はその場に、普通に立っていた。
『そんな、精霊の奥義が、ただの人間に防げるわけッ・・・・・・! 』
同時に、オヤの姿は、すでに薄れかかっていた。
かなり無理して、現世に留まっていたのだろう。幾重にも限界を超え、さっきの大技にて、それが臨界点に達した。
オヤの姿が、もうほとんど見えなくなる。
『・・・・・・申し訳ございません主様、どうやらここまでのよう━━』
そして、完全に消失した。
何も見えなくなった虚空に、私は呟く。
「ありがとう、オヤ。
━━ここからは、私がやる。」
そして、立ち上がる。
ツォンはそれを待たず、攻撃態勢へ移行した。
「今度は私の番だ。
マイクロミサイル、全弾発射‼」
彼女のバックパックより、クラスター弾のようなものが、計34基が発射され、全弾私に撃ち込まれる。
すぐさま私の身体は灰燼と化す。
しかし・・・・・・再生する。
「ならば、これならどうだ。
核エネルギー放射台、質力100%‼」
両手の甲を合わせ、掌に空いた砲台より、レーザー光線のようなものが発射される。
当然、私の肉体は崩壊に抗えない。
誤解されては困るが、私の肉体は普通の人間なのである。ただ再生するだけで。
当然痛いし、熱いし、怖い。
だが、耐えられる。
〝死ぬこと〟に、比べれば。
ツォンの攻撃は、私には“効かなかった”。
しかし、彼女は不敵に笑う。
「知っているぞ。貴様は、肉体は無敵であっても、精神は普通の人間。死のストレスは、今も積み重なっている。このまま攻撃を続ければ、いずれは精神崩壊を起こし、人格が消滅する‼」
その通りだ。
肉体は無限であっても、精神ダメージは蓄積する。
彼女の攻撃は続く。
私は何度も、“死ぬ”。
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