ベルンシュタインの魔女は人間を愛したかった

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 時は、シュタイン歴1310年。前王の突然の崩御(ほうぎょ)により、その王子達が血で血を洗う抗争を繰り広げ、2番目の王子が即位して2年。若き新王のもと、未だ政権の落ち着かぬことを狙った他国の襲撃により、シュタイン王国は未だ混沌の中にあった。それでも、争乱は徐々に落ち着きつつある。その落ち着きは、勿論、王とその側近の手腕によるものではあったが、他にもう一つ──。 *** 「少年達」  深い深い森の奥の、更にその奥。空から逃れようとするかのように鬱蒼(うっそう)と生い茂った木々の中。闇の入口のように深く暗い湖の前。そこに、座り込む3人の少年がいた。右から順に、銀色、紅色、藍色の頭をしていた。見たところ、彼等は未だほんの6歳か7歳。立ち上がっても自身の腰ほどの身長もなさそうな彼等の後ろに彼女が屈みこめば、彼等は揃って振り向いた。右から順に、いかにも子供らしい顔つきと、子供にしては冷めた目と、子供らしくない無表情。まさに三者三様。ただ、そのいでたちは三人とも同じようなものだ。きっとこの戦乱の世に珍しくない孤児だろうと、魔女はそう結論付ける。ただ、貴族だろうが孤児だろうが、こんなところにいるのは珍しい。どうしてこんなところにこの少年達はいるのだろうと、彼女は黒い帽子の下で小首を傾げた。 「何してるの、少年達」 「おねーさん誰?」  口を開いたのは銀髪の子だった。 「あぁ、噂の魔女ですか」 「本当に(からす)か闇と見紛(みまご)うような衣服に身を包んでいるんですね」  続いて、赤髪の子と青髪の子が続けざまに──訊ねるというよりは確かめるような口調で言った。答えを盗られてしまった彼女は面食らった。
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