1-第三話

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その日は雪が降っていたー。 夜空にはネオンの光が彩り、街はクリスマスムード一色。 毎年この時期になると、あの日の記憶が蘇る。 「あの日、君は泣いていた……」 俺の名前は"向日葵薫(ひまわりかおる)"、二十歳の大学生だ。 バイトを終え、宛てもなく彷徨うように繁華街をフラフラと歩きながら、三年前の"あの日"を思い返す。 三年前はまだお互い高校生で、クリスマスの一週間以上も前から彼女とは一緒に過ごそうと約束していた。 しかしその約束は、叶わなかった。 その理由は、クリスマス直前に彼女が突然に姿を消してしまった。 最後に掛かってきた電話で彼女は今すぐ会いたいと言ったのに対し、俺は冷たく断ってしまった。 今でも後悔が残る。 あの日、俺は全てのしがらみを捨ててでも彼女に会いに行くべきだった。 一週間以上前から彼女がどれだけこの日を楽しみにしていたかもわかっていた筈なのに、結果的に俺は彼女との約束を破ってしまった。 だから彼女は俺の前から消えてしまったのだと、今でもずっと後悔で苦しみ続けていた。
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