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今頃彼女はどうしてるだろうか。
もう俺の事は忘れて、他の誰かの側にいるのだろうか。
それならそれでも……彼女が幸せならば構わない。
男と違って、女はそういうところはかなりドライだと聞いた事がある。
せめて一言だけ、彼女を傷つけて……俺にはいっぱい幸せをくれたのに、いっぱい傷つけてしまった事を謝りたい。
そう思うのは俺のエゴで、自己満だって事は理解しているつもりだ。
彼女だって、いきなり俺が目の前に現れたら困惑するかもしれない……それでも俺は、せめてもう一度だけ彼女と会いたい。
会って話がしたい、話したい事が山のように沢山ある。
そんな思考を巡らせながら歩き続け、とあるスクランブル交差点に差し掛かった時、俺は目を疑った。
それは文字通り、まるで俺だけを残して世界の全てが止まってしまったかのように景色の流れが緩やかに感じ、更に絵画の一ヶ所だけが光を放っているかのようにそこだけが輝いて見えた。
数多の人混みの中、たった一人だけが輝いて見えたんだ。
俺は、気付いた時にはその輝きに向かって走り出していた。
そしてその輝きが、手を伸ばせば届く程の距離にまで近付いた時、俺は叫ばずにはいられなかった。
「蘭菜!!」
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