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やはり彼女は、記憶の一部を失ってしまっているらしい。
俺の事は全く覚えていないのに、自身の名前だけは何故か覚えているようで、不思議なのは自身が何故今ここにいるのかが曖昧なようだった。
彼女の質問に対し、俺はその一つ一つを丁寧に答えた。
俺と彼女は高校二年に進級したのをきっかけに付き合い始め、その年のクリスマスを一緒に過ごす約束をしていた。
しかしその約束は叶わず、その日を境に彼女は突然姿を消し、これまで一度も会えなかった。
「あなたは……私の彼氏、なんですね?」
首を傾げる彼女は、まだ実感が無い様子だった。
失踪の原因と、何か関係しているのかもしれない……そう確信した俺は、改めて彼女を護る決意を固める。
「蘭菜……もう一度、俺と一緒にいてくれ」
そう言って俺は、再び彼女の肩を優しく抱き寄せる。
それに対し彼女は、今度は拒絶せず受け入れてくれ、俺に体重を預けて凭れ掛かってくる。
「彼氏……彼氏、か。えへへ」
彼女に何があって今に至るのか……少し探ってみる必要がありそうだ。
しかし今はそんな事より、俺は彼女との再会が嬉しくて……嬉しくて、堪らなかった。
「お帰り」
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