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3.楽しい時間
「優芽!この賞、どうやって応募するの?」
数日後、比奈が泣き付いてきた。すでに比奈は3個も作品を投稿していた。そのどれもが引き込まれる内容で、どんどんフォロワーも増え、感想も書かれていた。
もう私よりも上手くて嫉妬しそうになるけど、こうやって頼ってくれると素直に嬉しかった。
「ここをタップして、次にこうすると、ほら、応募作の中に比奈の作品が出たでしょ」
「本当だ!ありがとう〜。すごく助かる!それに、感想もありがと!嬉しいもんだね、こう言われるのって」
ンフフフと言って比奈はスマホで口を隠して笑った。
「私の方こそ、拙い作品だけど読んでもらって、感想書いてくれてありがとう」
そうは言ったが、すでに比奈の作品の方が感想を多く送られていた。私の作品には比奈だけの時もあった。
「いやいや。だって、普通に良かったし。あ……、なんか上から目線だったね、ごめん」
少しの沈黙の後、エヘヘへと2人で笑い合った。
「そうだ。これ、比奈に合いそうな本、あったんだ。良かったら。読んだことあったらごめんだけど」
私は机から書店のブックカバーがしてある本を取り出した。比奈の作品から、こういうのが好きなのかなっていう勘で選んだ本だった。受け取った比奈はすぐに表紙を開いた。
「え、嬉しい!読んだことない。じゃあ、今度私も優芽に合いそうな本、選んでくるよ。あ、でも、優芽のことだから既読かもだけど」
「タイトルを教えてくれればいいよ。今回はちょうど家にあったから、持っていただけだし」
本当は比奈のために買ったものだった。でも、そう言うと比奈の負担になりそうな気がした。
「うん、じゃ、そうしよっか!」
そうして、少しだけお互いの作品について話していると、比奈がニヒヒヒって笑い出した。
「いいね〜、楽しいね〜」
ウリウリと比奈が私の頬を人差し指で押してきた。
「やめてよ〜」と言いながら、されるがままにする。その気を許し合ってる感じが心地よくて、今まで感じたことのない楽しさがあった。
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