5.反応がほしくて

1/1
前へ
/8ページ
次へ

5.反応がほしくて

 少しずつ、比奈が私の席に来ることが少なくなった。  作品は作り続けているようで、新作投稿のお知らせがくる。そのどれもが面白くて、私の作品なんかつまらなく感じた。  コメント数も増えていて、そのメンツも上澄みのような人たちばかりだった。 ふと思いたって、他のSNSで比奈のペンネームの「朝日奈」で検索してみた。  「朝日奈」はすぐに見つかった。フォロワーに比奈の作品にコメントした人がいたことや、その人の投稿に比奈の作品を紹介するものがあったから、特定は簡単だった。  悪いとは思いながらも、比奈が誰にどんなコメントを送っているのか読んでいった。  比奈のコメントはどれも楽しそうで、相手への気遣いと尊敬と嬉しさで溢れていた。  それを読んでいると胸がグラグラしてくる。そんな言葉、私には言ってくれなかった。  もっと頑張らないと。  比奈に認めてもらえるような作品を書かないと。  それから今まで以上に本を読み、執筆していった。でも、どれも反応は良くなくて、落選が続いた。さらに、比奈からのいいねもなくなっていった。  それでも、私は比奈の作品を読んで、いいねを送り、コメントを残した。そのコメントにはいいねが来るが、そこまでだった。私の作品には反応がない。  作品を投稿して、もしかしたら比奈がいいねをくれるかもしれないと、数分おきにページを更新してしまう。お知らせマークがない度に落胆してアプリを閉じるが、すぐまたアプリを開いてしまう。そんなことを繰り返してしまう。  比奈からのいいねが欲しかった。比奈からのコメントが欲しかった。比奈からの反応がほしかった。  次の作品にはきっと反応してくれるだろう。そう信じて、作品を作り続けた。 それが突然、何も書けなくなってしまった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加