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「一応指輪を買ってもらえた。だけど、うーん、苦労させられ、不自由である!」
隣で妻は楽しそうに僕の悪口を語っている。その瞳はまだ娘に危険がないかとみているが、睨まれたら怖そうだ。
「努力しているのは認めてくれないかな?」
娘の安全確認は妻に任せておいて、僕は正座をして妻に向かっている。誠意の現れ。
「そうだねー。努力はしてるんだろうけど、君は重要なことを忘れてるだろうからねー」
とんと思い付くことがなかったのでキョトンとしてしまう。
それを見た妻はあの求婚のときみたいな深いため息を吐いて立ち上がると歩き始める。
娘を抱っこして「あっち、お花畑があるんだよ」と今さっきの会話を気にしてないみたいに語る。
「ホントー! そっちが良い!」
もちろん娘は喜んで天使の笑顔で妻の話に釣られた。
軽く「んじゃ、ヨロシク」なんて軽い言葉で僕は荷物持ちとウサギの返却を任されて、二人のあとを追う。
小さな丘になっている場所を越えると白い花で埋め尽くされていた。
「こんなところがあったのか」
地元の僕でも知らない。綺麗に咲き誇る花たち。
花に囲まれたところで「パパー!」と手を振るのは天使な娘の笑顔。
だけど、妻になにかを言われると直ぐに下を向いて真剣になる。
「天気も良し、眺めも良し、気候も良し、安全。こうなると」
僕は二人が見えるちょっと離れたところに転がって眺める。なんだか幸せな気分。そして眠たくなる。
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