天使症

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 それから、いくつかの団体が、工場欲しさに塔を修理するために挑んできた。  しかし内側は頂上までとてもたどり着けず、外側からは上がることができない。  塔の上は、人間が作っておきながら人が触れられない、地上唯一の場所となって、天使の塔と呼ばれた。  やがて、数年後には、塔を直そうという者はいなくなった。  すべての死体を片づけるより、別の仕事を見つけたほうが早いし、儲かるということが分かったからだ。  工場は永久に閉鎖された。  天使症はなくなった。  エラエンが最初に塔で死亡してから、六年が経っていた。  町の人々は、戒めに、天使の塔の死者たちの名を刻んだ石碑を建てることにした。  その際、遺書を残した子供たちはそれと分かるとして、塔で絶命したことが明らかでない者――たとえばエラエン・ベネ――も多くいたが、当時急に行方不明になった子供たちはほとんどが塔に上ったはずだから、彼らの名前も彫り入れることにした。  名前の順番は、分かる限り、死亡した順とした。  以下にその碑文の一部を記す。 <我々の大いなる過ち、その愚かなる災いを繰り返さないためにこの碑を建てる。  災いは外から持ち込まれたが、我々は財を求めて道理を忘れ、身を卑しくして安寧を求め、罪を見ながら双眸を失って虚しく生き、その災いを云々…… (中略)  かくして、その身に受けるべからざる報いを受けた、罪なき子供たちの名前をここに残す。  エラエン・ベネ  アレス・ムートン  ニトルトン・ベルトクルツ  マーチ・アベンニー  ・  ・  ・  カーシイ・サウサンス  サラー・ショール  オーエン・ベネ  サントス・ベネ  パラ・ベネ 以上 発起人 ウルブス・ベネ 他 賛助者とも多数 > 終
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