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大陸の端のある工場地帯で、奇妙な事件が起きた。
地域住民の子供の毛穴、とりわけ肘より先から、白い羽毛状の物質が腕を包むほどに湧き出てくる。
むろん本物の鳥の羽ではなく、代謝機能の異常によって凝固したミネラル、乳酸塩、皮脂などが凝固したものである。
奇病には違いないのだが、「羽毛」には光沢があり、前腕から手のひらにかけて白い羽に包まれた子供たちの姿は幻想じみて美しく、この病は「天使症」と呼ばれた。
体内の栄養分を過度に輩出してしまう天使症は、やがて発症者を足腰立たなくさせ、緩慢な死にいざなっていく。
病名は、年端もいかない子供たちを次々に儚くさせていくこの奇病を皮肉ったものでもある。
天使症の初めての発症からは、すでに十年が経とうとしていた。
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