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春の太陽は工場の煙に隠れ、うっすらと、ひびだらけの白レンガ造りの家々を照らしていた。
十五歳のエラエン・ベネは、かまどにかけた大鍋の中身をかき混ぜながら、手のひらから見る間に生えてくる白く柔らかい羽を間断なくちぎりとって、スカートのポケットに棄てる。
ポケットからあふれた羽は、台所の床にはらはらと舞った。まだか弱い朝日を受けて、真珠色に輝いている。
見た目が美しいからかえってたちが悪い、と思う。この町の子供たちを映した活動写真は、首都で大流行したらしい。
だが、直接的な救いの手が差し伸べられる様子は、まだない。
エラエンが発症したのは一年前だった。当初はほんの糸くずのようだった羽は、今では白鳥の新毛のような形と輝きを放っていた。
この頃はもう、寝て起きると、本当に鳥になったように両腕がすっかり真っ白な翼と化すくらいに症状が進行している。
慢性的な貧血で、だるくてつらくて仕方がない。
生きるために必要なものを自らかなぐり捨てていく体は、もう自分のものではないようで空恐ろしかった。
「おはよう、エラエン姉」がやがやとした大同小異の声が、狭い台所に響いた。
「はい、おはよう」
エラエンに弟は四人いる。オーエン、サントス、パラ、ウルブス。みんな仲がいい。
けれど家はあばら家で、大鍋は――鍋こそ大きいものの――今日も皿によそう前から底が見えている。
エラエンは、湯でかさましした塩と豆だけのスープを四つの皿に分け、弟たちの前に並べた。
「エラエン姉の分は?」と十三歳のオーエンが訊く。
「作りながら食べた」
水で薄めたワイン――もう色がほとんどない――を四つの陶製マグに注ぎ、それからぱさぱさで穴だらけの四等パンを出してやると、弟たちはすぐに手づかみで食べ始めた。
いよいよ朝日が強く差し込んでくる陰影の濃いダイニングに、きょうだいの歓声が響く。
マグに浮いた二三の羽毛を、十歳のウルブスがエラエンに見えないようにつまんで棄てた。
両親は近くの土地や遠くの首都に出稼ぎに行っている。
これで、遠からずエラエンが倒れれば、この家はどうなるのだろう。
それは、この一帯の長子たちが一様に抱える悩みだった。
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