天使症

4/8
前へ
/8ページ
次へ
 しかしエラエンは結局、それらを自分で食べることはなかった。 「オーエン、サントス、パラ、ウルブス。きなさい。チーズがあるのよ」  四つに等分し、朝と同じように、自分の口に入れずに、食べたふりをして、弟たちに振舞った。  よくよく考えれば、自分にはもう必要のないものだということが分かったからだった。  それよりも最後に見たいものがある。  サントスとパラが、 「姉さん、こんないいもの、自分一人でこっそりと食べようとしていたんだろう」 「そうだろう」  と囃した。  エラエンは、 「そうなの。そんなことをしても、ちっとも楽しくないのに」  と言って、ごちそうに心底はしゃぐ弟たちを見て笑った。  エラエンの手のひらには羽があふれていた。  しかしもう、料理のために無理にちぎり取る必要はない。 ■
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加