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エラエンは特別な少女ではなかった。
だから、エラエンと同じような発想を、ありふれた子供たちの多くが抱いた。
そうして、天使症の子供たちは、エラエンと同じ道をたどった。
夜な夜な、そっと家を抜け出し、塔に忍び込んでは歯車に身を投じていった。
彼らは人知れずそうしていたはずが、いつしか町の噂となり、天使症に冒された者が夜中に塔を目指すのはお決まりになった。
たいていは一晩に、せいぜい一人か二人ずつ。
しかし、そうする子供は減ることなく増え続けたので、十人や二十人では済まなかった。
一晩に十人集まった日もあった。
やがて、塔での死者は百人を優に超えた。
いつからか、工場には、しじゅう白い羽が舞うようになった。
このころにはさすがに、それがなんの羽なのか、工場中が知っていた。
「まるで、狂った鳥が絶え間なく、天空で暴れ回っているようだ」
そう思った工場の人々は、しかし首都に住んでいてろくに足を運んでも来ない工場主に、いつまでもそのことを告げなかった。
短くない時が過ぎ、町から子供がいなくなるのではないかと思われたころ、塔の歯車が、嫌な軋み音を立てて止まった。
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