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屋上へと通じるドアは施錠されておらず、重そうに見える鉄の扉は、全く音を立てることなくスーッと開いた。
薄暗かった屋内の階段部分から、一気に視界が開ける。コンクリートが剥き出しの屋上に、開放的な青空が広がっていた。
ここの屋上には、ゴチャゴチャした器具などは設置されていない。ただ端にある手すりが視界に入るだけ……かと思いきや、それだけではなかった。
その手すりに、一人の少女がもたれかかっていたのだ。
「……!」
目を丸くしながら、ハッと息を呑む具良。
彼女は制服姿であり、場所も高校の屋上だ。おそらく具良同様、ここの生徒なのだろう。
後ろ向きなので顔は見えず、個人を特定するには不十分だが……。
その後ろ姿には、驚くべき特徴があった。
少女の背中には、大きな白い翼が生えていたのだ。
「ようやく見つけた! これこそ僕に相応しい女性だ!」
歓喜の叫びは、心の中で呟いたつもりだった。
しかし喜びのあまり、実際に口から出てしまう。
それを耳にした少女が、ようやく具良の存在に気づいたらしい。
「えっ、誰!?」
戸惑いの声を上げながら、少女が振り返る。
本当に慌てていたとみえて、背中の翼が手すりに当たり、バサバサと痛そうな音を立てるほどだった。
向き合った二人は、ここでお互いの顔を認識する。
「あっ、天田くん……?」
「園川さん……? 園川さんじゃないか!」
白い翼の少女は、天田具良も知っている人物。同じ教室で毎日一緒に授業を受ける、クラスメートの一人だった。
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