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「待っていたよ、園川さん」
放課後の屋上で向き合う二人。
昼間とは立ち位置が逆だった。
先に来ていた具良が手すりを背もたれにして、翼音が屋上に出たばかりのところで立つ格好だ。
「園川さん、僕と付き合ってくれ! 末永く将来を前提として!」
「えっ!? いきなり何を……」
突然の告白に翼音は驚き、それ以上言葉が出てこなかった。
同じクラスなので、翼音も具良の評判は知っている。翼音の親しい友だちの中にも、彼のファンクラブのメンバーがいるくらいだった。
だから当然、具良がいくら女の子から告白されても断り続けている件だって、きちんと承知していた。
そんな彼が、なぜ自分に対して……?
翼音の頭に浮かぶ疑問。それは具良にとっても想定済みだったらしく、彼女が口に出して尋ねる必要はなかった。
「これを見てくれ、園川さん!」
毅然とした声で具良が宣言すると同時に、彼の体が白い霧に包まれる。
ただし、それは一瞬の出来事に過ぎなかった。すぐに霧は晴れたが、その一瞬の間に具良の姿は変わり……。
ちょうど昼休みの翼音みたいに、彼の背中からは、大きな翼が生えていた。
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