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昼休みの喧騒で、教室も廊下も賑やかな校舎の中。
天田具良は一人、静かに階段を上っていた。
向かう先は屋上だが、特にはっきりとした目的や用事があったわけではない。屋上へ出られるドアが開いている確信もなかったけれど、閉まっていた場合は、階段の途中あるいは踊り場あたりで過ごそうと考えていた。
具良は彫りが深い顔立ちで、鼻も高いイケメンだ。小中高と学校やクラスが変わるたびに、新しく出来た知り合いの間で「西洋人の血が入っているのでは?」と噂される。彼本人が正直に「うちの一族は昔から日本の山奥暮らしで、異人との交わりはなかった」と告げても、なかなか信じてもらえないほどだった。
学業の成績は中くらいだが、運動神経は抜群で、色々な部活の助っ人に駆り出されるくらい。特に陸上競技のジャンプ系では驚異的な結果を出してしまい、陸上部の顧問から「ぜひ正式に入部してくれ」と頼まれてもいた。
そんな具良は女性人気も高く、同級生や後輩が勝手にファンクラブを作ってキャーキャー騒いだり、中には「付き合ってください」と告白してくる女子もいたり。
しかし具良にしてみれば、自分に相応しくないような女性からいくらモテたとしても、ただ鬱陶しいだけ。
だから時々こうして、無性に一人で過ごしたくなるのだった。
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