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外の大通りを甲冑を着た騎兵を乗せた騎馬の軍勢が走るけたたましい蹄の音が聞こえた。
リートは道具を取ろうとした棚の前から離れて店の外に立った。目の前を土埃をあげながら20騎ほどの騎兵が通りを過ぎて右へと回っていく姿が見えた。
「小僧、早く槌を持ってこい。」
親方の声だ、リートは急いで棚の前に戻ると槌を取って親方の元に戻った。
「親方、何かあったんでしょうか?」
リートの親方はその逞しい腕で槌を受け取ると言った。
「どこの所属だった?」
「甲冑に髑髏を貫いた剣を模した彫り物があったから……。アナーク公の親衛隊ですね。」
リートの言葉に親方はふんと鼻を鳴らして熱く燃える鉄棒を槌で叩いた。
親方が現王の弟である、アナーク公を嫌いだということをリートは良く知っていた。
親方は多くは語らなかったのだけれども、かつて近衛騎士団に所属していたようで、下々の噂ではアナーク公の不興を買って先王から続いてきたその軍歴に幕を閉じたということをリートは軒を連ねるお店の主人や奥さん方から聴いていた。
どういういきさつでそうなったのかは親方は話さなかったけれどもリートには何となく分かるような気がした。
今年15歳になるリートは孤児だった。母親は夭逝し、近衛騎士団で親方の部下であった父親は内陸国であった王国の創建時からの悲願である海港確保を成し遂げる戦争で戦死した。
孤児になったリートは父の戦友である親方に引き取られこうして鍛冶手伝いとして暮らしている。
リート本人は軍人として名を遂げたいをいう思いはあったが、親方の前では何となく言いそびれていた。
リートの国は内陸に端を発した王国で四方に絶えず敵を持ち、戦乱が耐えることが無い国だった。
そんな王国の歴史の中、先王アイボリー1世は武勇に貴び、政治的手腕にも秀でた王で、先王の時代に王国は外交と内需拡大による国力増産そして蓄えた武力で悲願である海への道……海港を確保したのだった。
それ以外にも巧みな外交で遠交近攻策を取り、国土とじわじわと拡大して行った。
現王は軍事的能力は先王に劣るが、政治的手腕は流石先王の子と言わしめるだけの実力を持っており、その足りない軍事的側面はかつて王国を大陸の覇者足らしめんとしたアイボリー王の生まれ変わりと言われるアナーク公が受け持ち、王国は戦乱こそ続けども繁栄を保っていた。
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