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新は家族というものが何かわからない。戸籍上両親や兄と呼ぶべき人間はいるのだが、新はずっと孤独だった。
両親は兄を溺愛し、新のことは無視をしたり、暴言を気まぐれに吐かれたり、大切にされたことはなかった。何度両親や兄に傷付けられたのかわからない。
そんな新は家族というものが何かわからない。家族が温かく幸せなものなのか、みんなが当たり前に知っていることがわからない。そのため、結婚に踏み切ろうと思えなかった。
「みずきは僕と家族になりたいって思ってくれてるのかな……」
みずきにも家族がいない。みずきは物心つく前に両親を亡くし、施設で育った。お互いに家族が何かわかっていないのだ。
新は結婚情報誌を手に取る。表紙の幸せそうな花嫁を見ているとみずきに見えてくる。ウェディングドレスを着たみずきが新郎に微笑んでいる。その新郎が自分以外と考えた時、新の胸がナイフで切り付けられたように痛くなった。
「お風呂ありがと〜!お風呂場に間違えてお菓子の入れたエコバッグ持って行ってたよ〜!」
濡れた服から部屋着に着替えたみずきが、大きく膨らんだエコバッグを手に入ってくる。みずきは新が持っている結婚情報誌を見て、「あっ!」と声を上げた。
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