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「新、違うの!結婚したいとかじゃないから。その雑誌の付録が好きなキャラクターのやつだから買っただけ」
新は表情に書かれている付録の情報を見る。今回の付録は保冷バッグだった。その保冷バッグに描かれている犬のキャラクターは、確かにみずきが好きなキャラクターである。
「私は新と一緒にいられるだけでいいんだよ。結婚していないカップルなんてたくさんいるし、結婚や出産が人生の全てじゃないんだから」
みずきは笑いながら明るく言う。気が付けば、新はみずきを抱き締めていた。
「僕は、怖いから何も考えないようにしてきた。ずっと逃げてた」
「新?」
「みずきをきっとこんな僕は幸せにできないって思っていた。でも、みずきが誰かに取られるのはもっと嫌だって思ったんだ」
胸の中がただ苦しい。泣き出してしまいそうになる新を、みずきがそっと抱き締め返した。そして優しい声で言う。
「幸せにしなくていいんだよ。私が幸せでも、新が幸せじゃなきゃ嫌だ。……一緒に幸せになりたい」
体がゆっくりと離れる。互いに見つめ合った。みずきの顔が少しずつぼやけていく。新は笑った後、あの言葉を口にする。
「こんな僕でよければ、結婚してくれませんか?」
「はい。こんな私でよければ、喜んで」
唇が重なる。家族が何か二人は知らない。しかしその答えはゆっくり探せばいい。初めて新はそう思えた。
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