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シェニムの大樹から降りそそぐ光のように、輝く体毛に全身を覆われ、三本の尾を持つ聖獣サンクテクォ。身体を丸めて、三本の尾全てを枕にして眠っていたサンクテクォが起き上がると、その尾を鞭のようにしならせ、シェニムの大樹の幹を打ちつけた。
地響きを伴うほどの衝撃に、シェニムの大樹は全身を揺らした。大きな葉同士が擦れ合い、精霊の笑い声のような音が森に響く。同時に、葉の中に蓄えられていた七色の光が森中に飛び散った。
「シェニム」というのはこの地の名だ。シェニムの森は三方を海に囲まれている。シェニムの大樹は、その岬の中心部分にあった。そして大樹のすぐ近く、海に面していない大陸側には奥深い洞穴がある。
フィクスムがその姿を完全に海から現し、フィクスム二つ分ほど空に昇る頃になっても、その洞穴に光が届くことはない。シェニムの大樹が光を遮っているのだ。
一万年光が届かなかった洞穴。その洞穴に、光を届かせんとする者がいた。
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