終われない

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「他には……って、これ発煙筒か? なんでこんな物が……えっと、後は……」  サバイバルナイフに大量の非常食。  水が2本とペン、ノート、電池、火薬。  重いと思ったら、こんなに入ってたのか。 「指輪……?」  リュックの奥に転がっていた金属を拾うと、それは紛れもなく指輪だった。   「こんなのどこで拾ったんだろ、記憶にないな。 ……まあいいや、しまっとこ」  と、リュックに戻そうとしたのだが。 「…………あれ?」  いつの間にか指輪が中指に収まっていた。  さっきまでは確かに手の中にあった筈だ。  なのに……。 「なんで指に……ん? んん? ふん! ふんんんんん! ……ちょ、嘘でしょ。 抜けないんだけど、これ」  何度もトライしてみるが、指輪はやはり微動だにしない。  まるで指と一体化してしまったかのようだ。    謎の場所で目が覚めたと思ったら、今度は謎の指輪が指から抜けないと来た。  色々ありすぎてパニック起こしそう。  けどここで騒いだところで事態は好転しない。  むしろ悪い方にしかいかない。  だから慌てちゃダメだ、パニックになっちゃダメだ。  どれだけ怖くても自分を見失っちゃダメだ。  だってそれがこの地獄のような世界で生き抜く、何よりも大事な心構えだから。 「……ふぅ」  深呼吸をすると心が少し落ち着いた気がした。  大丈夫、大丈夫だ。  なんだかんだ、こんな世界で四年も生き抜いてきたんだ。  やれる、僕ならやれる。  絶対に生きて帰るんだ。 「……よし」  そう自分に暗示を掛け、もう一度ハンドガンの動作をチェック。  ハンドガンはちゃんと動いてる。  足もまだ動く。  動くうちに行くしかない。 「行くか」  最後にもう一度自分に言い聞かせるよう呟き、最初の一歩を踏み出した。 「………………」  どうやら出てきたところを不意打ちで襲ってくるわけではなかったようで、一安心だ。  
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