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「グルルルル……」
居る、間違いなく。
そう遠くない場所に何かが存在している。
慎重に行こう。
足音を立てずに、ゆっくりゆっくりと。
「はぁ、はぁ」
驚異が近くに居るせいか、呼吸がかなり荒い。
この呼吸ですら勘づかれる危険性がある。
少し落ち着かなければ。
ここら辺で少し呼吸を整え────
「グウゥ……」
「ひ…………!」
あ、危なかった。
まさか目の前を横切っていくとは思わず、声を上げるところだった。
運良く気付かれなかったから良かったものの、恐らく次はないだろう。
にしても、なんだあのレヴナントは。
あんなレヴナントは初めて見た。
「ケルベロス……か?」
こっそり曲がり角から覗き込んでみたが、どこからどう見ても、かの有名なモンスター。
ケルベロスにしか見えなかった。
三首に巨大な肉体。
あんな奴に襲われたら一貫の終わりだ。
さっさとここから出ていこう。
「やっと着いた、ここが出口か」
迷路のような通路を抜けると、階段が現れた。
この階段が出口に続いているかはわからないが、他に出口もないから登るしかない。
というかここから一秒でも離れたいからさっさと登ろう。
食い殺されるなんて真っ平ごめんだからね。
と、僕はケルベロスに気づかれる前に、階段をそそくさと登っていった。
「……何も、居ないよな? よし……」
階段の影から一通り確認して、階段を登りきった。
どうやら出口ではなかったらしい。
大きな広場が広がっていた。
しかもただ広いだけじゃない。
まるで闘技場とでも言わんばかりの形をしている。
「………………」
……どうにも嫌な予感がする。
さっさと通り抜けてしま──
「!?」
な、なんだ!?
急に部屋が光出したぞ!
いや、違う。
部屋が光ってるんじゃない。
目の前に突然出現したあの模様が光ってるんだ。
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