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21
────愛の目が見れなかった。
翌日、私を迎えに来てくれた愛。愛は体調が戻ってきているのか顔色は良くなっていた。
私を後部座席に乗せた愛は、「おはよう」と笑う私を見て「どうかしたか?」と顔を傾けた。
いつも通りの顔をしているはずだった。
心配かけないように。
それでも洞察感がある愛にはすぐにバレてしまう。
「分からない……、愛の風邪うつっちゃったのかな」
静かに笑えば、愛は眉を下げ「看病、悪かったな」と頭を撫でながら私を引き寄せた。
「…もう平気?」
運転手はカーテンで見えず。私はすんなりと愛の肩に頭を預けた。
「ああ」
「そっか、よかった」
口を開ける度に、唇がヒリヒリした。昨日家に帰ってから、ずっとずっと唇を洗っていたせい。歯磨きも、何回も何回もした。出血もして歯茎が痛いくらいに。
「体調、悪くなったら連絡してこい」
「うん……」
「今から戻るか? 家に」
「ううん……」
できればずっと、このまま、愛と過ごしたい。
「愛……、あのね」
「ん?」
「昨日の夜、寝付けなくて」
「寝てねぇの?」
「うん、だから……今日はこのままホテル行っちゃダメ……?」
私の作戦……。
甘えるように愛を上目遣いに見つめれば、愛は私の頭を撫でながら「…わかった」と呟いた。
私には優しくて甘い男。
ごめんなさい……。
ごめんなさい愛。
私は昨日、藍さんとキスしてしまった。
途中でコンビニへより、飲み物とお昼ご飯を買った。
ホテルにつき、制服姿のまま愛を連れてゆっくりと寝転んだ。心配そうに見る愛は、昨日、私が藍さんと会っていたことを知らない。
「病院、行った方が良くねぇか?」
熱を確かめるためか、私の額にふれる愛を引き寄せた。
「大丈夫……、寝てないだけだから。愛もこっち来て欲しい」
座ってたままの愛は、腕時計を外すと私の横に寝転んだ。寝転んだまま眼鏡も外した愛は「寝れそうか?」と優しく呟いてくる。
「愛?」
「うん?」
「キスしてもいい?」
「え?」
「大好き愛…………」
愛は一瞬戸惑っていたけど、愛は私の誘いに乗った。やっぱり、愛がいい。藍さんよりも……。
「どうした? お前、今日変」
「寂しかった」
「……」
「いや? するの。愛に抱きしめられたい……」
腕をつき少しだけ上半身を起こし、前かがみになっている愛に今度は自らキスをした。私に答えてくれる愛は、舌を絡ませていく。
愛……。
愛……。
ごめんなさい。
ごめんね。
騙して、ごめんなさい…………。
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