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──藍さんの名字はなんだったかと、考えた。
思い出すのは『ミドウヘごちそうさま』というカナさんの顔に書かれた文字。藍さんの名字はミドウ。
ミドウランという名前でネットで検索をかけてみた。だけど全くヒットしなく。
漢字は──……
御堂
美堂
三堂
何種類もあって、どの名字かも分からない。
今となれば、『ミドウへごちそうさま』という文字さえ、本当の話か分からないけど。
だけど、実際にその名前の『ヤクザ』はあった。『御堂組』と呼ばれるそこは、ネット検索でも出てくるくらいで。
でもそこの『御堂組』に藍さんの名前はなかった。──……藍さんは、ヤクザ……極道の人間ではないのかな?
藍さんの殺したい相手の組の名前も、あった。
震えた手でスマホを見つめる。
私はこの人を殺さなければならないらしい。
愛を救うためならば。
スーパーで、包丁を買った。
『あいつは朝、いつもこの場所に現れる』
藍さんが言ったその場所で、私はこの包丁で人を殺す……。
もうとっくに愛は起きているらしい。
さっきから、愛からの着信履歴が凄く。
『何もするな!!』
どうやら愛は、私が何をするか分かっているらしい。
愛からのメッセージを見たあと、暗い夜空を見上げた。
もう明日の朝には、見たくなかったこの夜空も見上げることは無いのだろう。
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