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項垂れながら泣きそうになっている愛は、死ぬのなら2人がいいらしく。 「……わたし、全く覚えてなくて……。どうしてここにいるの」 「…………、……見つけた時には手当された状態だった」 少しだけ間を開けた愛は、ゆっくりと口を開いた。 「命に別状は無いけど、首からの出血だから安静に。貧血を起こしているから動くな、と」 「……」 「そう言ってた、湖都がやろうとしてた男は…。それで俺がここに連れてきた」 つまり、私は助けられたらしい。 「……うん。……藍さんは……?」 「あいつの耳にも入ってる。」 「それで……?」 どうなった? 「……」 黙り込む愛は、唇をかみ締めた。 その表情を見て、何か、良くないことがあったのだと直ぐに分かった。 私が寝ている間に、何かあった。 「……あの人は今、警察にいる」 警察……? 警察に? どうして? だってあの人は、悪いことはしていない。 だって、その〝悪いこと〟は、私たちにさせようとしていたのだから。 「な、なんで……なにかしたの?」 「……」 「愛?」 「……」 「俺たちだけだと思ってた」 「……え?」 俺たち、だけとは? 全く意味が分からなくて。 理解しようにも、理解できない。 「湖都……、今なら藍さんを捕まえられる。警察だってバカじゃない。姉ちゃんの事だって、証拠が集まれば捕まる。今は任意で……行ってるけど」 「藍さん、捕まるの?」 「うん……、もう無理だと思って……。俺が証拠を提出した。ボイスレコーダーとか、そんなんだけど。さすがにもう、こんな事になって、見過ごせない」 証拠を、警察に提出? 藍さんが捕まるように? 「私が、死にかけたから?」 「……」 「……いと?」 愛は、何も言わない。 さっき、俺たち以外にもって、愛は言ってた。 でもまだ、理解ができていない。 愛の顔は、暗いまま。 「いと……?」 「あいつ……蛍にも…………言ってやがった……」 だけど、その一言で、何が起こったのか分かってしまった。 蛍に何かあったのだと。 蛍が、藍さんに──何か言われたのだと。 「ど、して、──蛍は、蛍はなにも、知らないはず……!!藍さんがアイだって……!!」 首が痛む。 「知らなかった、何も……」 「だったら、どうして……!!」 「もう終わりだ、〝帝国〟は……」 「何があったの!!?」 痛む首を我慢して、私は起き上がった。愛の服を掴む。愛は苦しい表情を浮かべたままで。 「蛍は!?」 「……」 「蛍はどうしたの?!」 「……」 「藍さんに何かされたの?!」 「……」 「……愛!!」
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