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「……私のせいで、何かあったの」
「……ちがう」
「ほたるは……?」
「……」
「〝帝国〟が終わりってどうして?」
それからどれだけの時間が経ったのか分からない。シンカイへ言っていた夕方の時間も、過ぎていく。
愛のスマホが鳴るけど、愛は出ない。
「〝帝国〟で──……」
と、愛が話し出したのは、もう愛のスマホの電源が切れて、窓の外は真っ暗になっていた。
「うん……」
「すまない……」
「愛……」
「これを聞いたら、湖都は死のうとするかもしれない」
「……うん」
私が、死のうとするほどの話らしい。
「死ぬ、時は、2人で──……。1人で絶対死のうとするな……」
さっきも同じことを言った愛は、久しぶりに私の顔を見ると、ゆっくりと抱きしめてきた。
「痛くないか?」と、聞きながら。
「痛くないよ、大丈夫だよ」
「すまない……」
「いと……」
愛の体が、震えていた。
私の肩に埋もれる愛。
じんわりと、私の肩が濡れたのが分かった。
愛が、泣いている……。
〝死のうとするな〟
〝蛍〟
そのふたつの言葉で、何があったのか、嫌でもわかってしまった。
だけど涙も、少しだけ冷静だったのは、弱っている愛を目の前にしたからなのか。
それとも、まだ、現実味がないからか。
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