1

2/8
前へ
/249ページ
次へ
ある日、2ヶ月前、 私は予備校帰りに、襲われた。 言葉通り、襲われた。 ―――月のない夜。 ―――真っ暗闇。 ―――動く大きな車。 ―――何人もの、男の笑い声。 「おい、ケイ、写真撮っとけよ」 ―――息苦しい ―――掴まれた手首が痛い ―――下半身が、割れるよう ようやく終わった時には、男の欲で汚れきっていた。 それから私は、どう行動したのか思い出せない。 お母さんによると、隣町で私は車からおろされたらしく、どこからどう見てもズボンが表裏反対で、上着のボタンの位置がズレていたりと。 服が乱れている私に不振を持った仕事帰りの女性に保護されたんだとか。 そこから、警察、親へと連絡が渡り。 レイプされたって言うことが自分自身で理解したのは、次の日だったような気がする。 初めての男の経験はレイプだなんて、それも1人や2人じゃない人数で。 そう思った瞬間、私は気が狂ったように叫んでいたと、お母さんから聞いた。 「何か覚えていることはあるかな?」 事件から数週間、容態が落ち着いた私に、婦警さんらしい人が聞いてきたけど、正直覚えていなかった。 車のナンバーも。 何人かも。 暗闇のせいで、顔さえも見えず。 ああ、でも、ひとつある。 覚えていること。 ―――おい、ケイ、写真撮っとけよ 私を襲ってきた男の、名前。 ―――ケイ 私はその名前を、二度と忘れないだろう。
/249ページ

最初のコメントを投稿しよう!

152人が本棚に入れています
本棚に追加