本当のお肉

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 それならと事業展開やビジネスの協力を申し出て、信用を得るところから。まんまと彼の戦略に乗せられている気もするが、こうしてレストランにこぎつけた富豪や美食家が集まった。  全員目隠しをされて車に乗せられ、移動すること一時間以上。ようやくレストランに着いたが、席に座るまでずっと目隠しをされたままだった。  目隠しを取るよう言われて取ってみれば、円卓だというのに一人ひとり完全に仕切られている。誰がいるか見ることはできない。だからこそ会話が弾む。  料理が運ばれて来た。メニューはないので、見た目で判断するしかない。レストランだというのに華やかな雰囲気はなく、音楽もなし。いかにも秘密の……裏の催しのような空気に、ピンとはりつめた緊張感があった。  運ばれて来たものを見て皆息をのんだ。それは、ただ丸ごと焼かれただけの肉なのだ。添え物もソースもない、しかも一切れだけ。見た目だけなら小料理屋にさえ劣る。 「ふむ? 絶対の自信がある場合、究極にシンプルになるが。よほど自信があるのかな」 「そうね。挑戦的な見た目、受けてたとうかしら」  口々に好きに言うと、一口。しばらく無言が続いたが。 「牛肉? いや、そんなはずは。しかし牛肉の味はする」 「むむう、牛肉に違いはないが。はて?」  驚いた声が次々にあがる。どんな肉だろうと思ったら、ただの牛肉だ。美味いは美味いが、驚くほど美味いかといわれると贅をつくした彼らからすれば「普通」だ。 「脂のバランスがあまりよくないわ、サシが少ないしジューシーさが足りない」 「これならソースを添えた方が肉のうまみが引き立つだろうに。なんなんだ?」  困惑したような客たち。わずかにざわついた時だ。 【よく味わってください。とても貴重な肉です】  どこからか声がした。自分の周囲しか見えないので誰なのかわからないが。 「貴重? これのどこが?」  問いかけには応じない。一方的にしゃべっているだけのようだ。そして、次に運ばれてきたのは豚肉。次が鶏肉、次が魚。動物ばかりだ。サラダもスープも来ない。  どれだけ美味しいものが食べられるのかと楽しみにしていた者達だ。だんだん不満が高まっていく。 「おい、これが究極の料理? これよりもっと美味いものを数多く食べて来たぞ」 「私もよ。一皿三百ドルのステーキなんて食べ飽きたくらい」
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