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太一は部屋から出て来て、安堵した顔をする。
スマホを落として眼鏡が壊れただけなのに、お義母さんを呼ぶほどショックだったの? 見た感じ、眼鏡はひどく壊れているようには見えないし、今現在も普通にかけている。
全く自分のことになると大騒ぎして、大袈裟なのよ。スマホはロックしてあるもの、大丈夫。バックアップもあるし、最悪買えばいいじゃない。
お義母さんまで来るなんて、どんだけ過保護なの? 警察にも行ったというし、あとはクレジットカードなどウォレットの中身を止めるとか、SNSのパスワードをパソコンで変えるとすればいいじゃない。そもそもスマホのフェイスIDやパスナンバーもある。中身が流出する可能性は低いはず。
夫の太一に呆れてしまったが、来てしまった客を帰すわけにはいかない。
「お茶でもいかがですか?」
リビングに案内しようとしたら、
「唯香はもういいから。母さんだけこっちに来て」
太一は自分の部屋に呼んだ。
おかしい。どうして? なぜ? 思いっきり顔を顰めてしまった。
「ちょっと母さんにいろいろ頼んでいてさ。すぐにお茶飲みに行くから、唯香はリビングで準備しておいて」
訝し気な私を太一は追い出した。
「唯香さん、すぐに行くからね」
お義母さんも階下から私に呼びかけた。
奇妙な感じがした。それと疎外感。二人で何かコソコソやっている? 気分が悪いし、腹が立った。
「ねえ、誰が来たの? こんな時間に」
沙耶が三階から降りて来て不安そうにする。
「あ、パパのおばあちゃんがきたの」
「え? なんで? スマホがなくなっただけじゃん」
沙耶が嫌な顔をする。
「ねえ、ママ。お腹空いたんだけど何かない? ん、どうしたの?」
「おばあちゃんが来たんだって」
「こんな夜中に?」
恵茉が顔を顰めた。
「そうなの。ちょっと待って、ポンデケージョの冷凍のやつがあるから、チンしてあげる」
「うん、ありがとう」
「いいな」
喜ぶ恵茉を沙耶が羨ましそう見ている。
「沙耶も食べる?」
「太るから我慢する。素敵な高校生になるんだもん。でも、何しに来たの? 夜中だよ」
「失くしたスマホの他に、何か用事があったみたいだけど」
「はあ? よくわからないんだけど。明日でもよくない?」
沙耶と恵茉は少し声を荒立てた。
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