59人が本棚に入れています
本棚に追加
「叔父さんに頼んだの? 叔父さんってさ、口うるさくて厳しい人なんじゃない? パパが何をしでかしたのか、知らないけどさ」
「パパは馬鹿だな」
沙耶と恵茉は呆れた顔をする。
「お茶、入れておこうか。冷めたっていいんでしょ、きっと」
私のことをキッチンに追いやりたかっただけだろうしね。
小さなため息をつきながら、湯呑の準備をする。
「沙耶と恵茉はもう寝ちゃったことにするから、上に行っていなさい。面倒に巻きこみたくないわ」
「はーい。後で教えてね」
「絶対だよ」
子どもたちも大きい。何でも知られないようにするよりも、知っていた方がいいという考えだ。隠してもいい結果にはならない。お義母さんのことも分かったら話そう。
私は小さく頷く。
「唯香さん、もう帰るわ。お邪魔しました」
一階からお義母さんの声がした。
「え? 今、お茶が入ったところですけど」
「夜も遅いし、大変なところに悪かったわねえ」
お義母さんが苦笑いする。
「もう用事は済んだんですか?」
「まあね、意外に元気そうだからよかったわ。唯香さん、本当にごめんなさい。あとは頼むわね」
お義母さんが私の顔を見て微笑む。私もつられて微笑んでしまった。
なぜ笑えるの? 太一が殺されそうというのに。どうして?
お義母さんの態度に疑問がわく。
本当は何があったんですかと聞きたかったが聞けなかった。
お義母さんは「しばらく太一は家にいるしかないわね。唯香さん、太一のこと、本当によろしくね」と言って帰っていった。
そっか。太一、しばらく家にいるのか。在宅勤務にするのかな。当然、太一にも何が起きているか聞きたかったが、怒鳴られたり不機嫌になって八つ当たりされるのが面倒で声をかけるのをやめておいた。
四
スッキリとした青空が広がっているが、冬の朝はやはり寒い。沙耶と恵茉はさっき学校に行ったばかりだ。コートを着て、バタバタと出ていった。明日は沙耶の推薦入試だ。沙耶はすでに緊張しているようだった。
「ピンポーン」
玄関の呼び鈴が鳴る。
「多分、恵茉か沙耶だから、玄関、ちょっと出て?」
有給休暇にした太一は、一階の自分の部屋にいるはずだ。気になる仕事があるから、ちょっと仕事してくると言ってこもっている。
「俺、出れない」
最初のコメントを投稿しよう!