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私は悪くないし、私が不倫したわけではない。
沙耶と恵茉もいる。第一に子どもたちを守らなければいけない。あ、明日、沙耶の推薦入試だ。まずい。何とかしてあげないよ! 急いで解決しなければ。
深呼吸すると、少し落ち着いてきた。
スマホの画面は太一のLINEのままだ。何度見ても不倫の文字がある。夢ではないらしい。受け止めなければいけない。
まずは子どもたち。沙耶と恵茉を守らなくてはいけない。
そう考えていても、いろいろんな思考が頭の中を錯綜する。
私のせい? やっぱり入院のせいかな。たった四日間、入院しただけなのに? 手術の前も、後も、私たちは性行為をしていた。
病気のせいで不倫していたというならば、私を抱かないだろう。思考が行きついた時、少しほっとした。
太一が「傷跡が痛々しい、かわいそうに」と優しく触ったことを思い出す。確かに最近回数が減ってはいたけれど、仕事が忙しいからだと思っていた。
大丈夫、手術の痕が私を女に見えなくしているとかではない。
じゃあ、なぜ太一は不倫したの? 不倫するような人だっけ? 付き合っていたころも含め、女性関係でトラブルを起こしたことはなかったはずだ。
本気だったのかな。あ、LINEには『家庭を壊す気はなかった。本気ではなかった』と書いてある。家庭を壊さないとか、本気でないってどういうことなんだろう。
棚田和樹に玄関で会ったとき、私に殺意があったわけでもなさそうだったし、何か企んでいるかのようには見えなかった。むしろ、言うならば、じっと見ていた意味は、同情? 同類だからか。
浅い呼吸を数回、それから頬を叩く。
しっかりしないと。明日は沙耶の入試だ。
目を閉じて、呼吸に集中する。不倫した理由を帰り道延々と考えてしまった。
どケチな太一のことだ。やっぱりお金だろうか。幼稚園の先生だもん、共働きだし。お金を稼いでるもんね。専業主婦、パートお休み中の私より魅力的だったのかな。
「誰のお金を使っているんだ。誰が稼いでやっているんだ」って、今までさんざん言われていたし。
やっぱりお金かあ。私じゃ不満だったのだろう。本気であっちの女に乗り換えしようとしていたんだな。いや、『家庭は壊さない』とあるし。分からないな。はああ。
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