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アプリとは、出会い系やマッチングアプリのことだろうか。新しい大きい建物だからと言ってこんな病院の前で待ち合わせもねえ。もうちょっとセンスのある場所がいいんじゃないかと思うけど。
雨がまた降り始めた。
急いでスーパーを出ると、スマホの時計は六時を過ぎていた。家に帰ると、リビングで沙耶が恵茉のカウンセリングをしている最中だった。
「恵茉は男を見る目がないんだよ。どうして二回目も付き合うの? だから言ったじゃん、浮気癖がある人は治らないって」
「でもさ、稜也が私のことやっぱり好きだって言うし。まだ私も未練があったからさ」
「もっと警戒しないと」
「だってさ、また二股掛けるとか思わなかったんだもん。今度からそういう人とは付き合わないようにする」
恵茉は口を引き結ぶ。
「好きって言われた人と全員付き合うわけにはいかないの。悪い人だっているんだから、ちゃんと選ばないといけないんだよ」
沙耶の説教に恵茉は俯いた。
「さあ、ご飯にしましょう。今日はパパも帰ってくるわ」
「めずらしい。こんな早い時間に帰ってくるの?」
「ほんとだ。いつも十時じゃん。テレビ見れないじゃん」
恵茉がだるそうに言う。
「いつもは仕事が忙しいのよ。仕方がないでしょ」
もうパパが早く帰ってくると言って、喜ぶ年齢ではないか。沙耶と恵茉を見る。二人とも大きくなったなと思う。
夫の太一を一応庇うと、
「どうせジムと飲み会でしょ。いつも残業なんて、嘘なんじゃない? 遊びまわっていてずるいよね。あ、私、塾あるから、パパを待たないで先食べるよ」
「私も食べるよ。お姉ちゃん、推薦入試受けるの?」
「推薦で受かったらラッキーだもん。今まで真面目に勉強したことを評価してくれるんだよ。推薦入試を活用しないとね」
沙耶が恵茉に教えた。
「ママも食べたら? どうせ食べてきたって言うよ」
「一緒に食べようよ」
沙耶と恵茉が誘ってくる。
「そう? 早い時間だし、パパもうちで食べるんじゃない?」
子どもたちの言う通り、やっぱりパパは夕飯を食べてきたっていうかしら。あり得るわと胸をよぎる。
もしかして、私が退院したばかりだから、早く帰ってきてくれたのかもしれない。
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