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その言葉を聞くと、大塚は「分かった」と頷いた。
そして残念なことに、それきり何も話さなくなってしまった。
――ユウは内心焦った。
声を出さなくなるということは、彼の精神がかなり衰弱している証拠だからだ。
過労によるストレスで、魂に深いダメージを負ったせいで、ここまで精神が疲労してしまうとは……。
魂の治療は、短いケースで三か月、長いと半年以上かかる。
大塚の場合、三か月以内に決着をつけなければいけなそうだ。
このまま治せなければ、悪霊になるどころか大塚昭という存在がこの世から消えてしまうかもしれない……。
大塚の見た目は、ひどいものだった。服は垢だらけで黄ばんでおり、髪は何日も風呂に入っていなかったようにテカテカだ。目は落ち窪んで真っ黒。当然、頬は痩せこけている。
いずれにせよ、このままじゃ駄目だ。
見た目の問題はひとまず置いておいて、今は大塚の精神をケアしなければならない。
そのために、会話は必要不可欠だ。
ユウは思い切ってもう一度声をかけた。
「……あ、あの」
「?」
大塚は、声を出さずに顔を上げた。
「ミ、ミニひまわりってかわいいですよね……」
ユウは張り付いた笑みを浮かべる。当然彼は下を向いて黙ってしまった。
やっぱり駄目だったか……。ユウは項垂れた。
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