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ハロウィン
10月31日と言えば、誰もが真っ先に思い浮かべるであろうイベント、ハロウィン。
幽霊や魔女の仮装をして「トリック・オア・トリート!」と言ってお菓子を強請る。
最近はアニメやゲームキャラクターのコスプレイベントなんかもあったりする。
「というわけで、最近はかなり仮装のレベルも上がってるわけですよ! だったら私たちが紛れていたって、そう簡単にバレないと思いませんか?」
「何言ってんの。コスプレか本物かなんて一目瞭然に決まってるでしょ」
頭上に黄金色の輪っかを浮かべ、背中に白い羽を伸ばした色白の少年が鼻息荒く熱弁する。
少年と同じ輪っかと羽をもつ色白の妙齢の女性は、落ち着いた声でバッサリと切り捨てた。
少年はまるで捨てられた子犬のようにしゅんとした顔で女性を見た。
少年の名はニコア。女性の名はミシル。
2人は天使であり、先輩後輩の間柄である。
「どうしてですか、ミシル先輩! ハロウィン! 楽しそうじゃないですか! お菓子貰えるんですよ!?」
「お菓子を貰ってそんなに嬉しい?」
「はい!」
呆れた様子のミシルに、ニコアは目を輝かせて頷いた。
「味覚ないのに?」
「そんなことはどうでもいいんです! 人間が作るお菓子を見たことありますか? とっても可愛らしいクッキーや美しい造形の砂糖菓子、色や艶が見事なケーキ! 今にも美味しそうな匂いが漂ってきそうでしょう?」
「嗅覚ないのに?」
容赦ないミシルに、ニコアは頬を膨らませる。
「先輩には夢がないんですか!」
「夢とかの問題じゃないでしょ。とにかく、下界に行くのは許可できない。先輩としても、あなたの姉貴分としても」
ニコアは融通が利かない姉貴分を涙目で睨みつける。ミシルはどこ吹く風で大きなあくびをひとつした。
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