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かくして下界へやってきたニコアとミシルは、暗くなった町でハロウィンパーティーを楽しむ人間の中に紛れ込んでいた。
2人が見ても、誰のコスプレをしているのか分からない人たちから、分かりやすくゾンビやミイラの仮装をした人たちまで様々だった。
薄く四角いスマホという端末に今の自分たちを切り取る人間を見ながら、2人は羽と輪っかを隠すことなく歩行者の波に流されていく。
「え、そこの天使ちゃんたち、めっちゃリアル! その衣装どうやってるんですか? よかったら一緒に写真撮ってもらえませんか?」
不意に人間に声を掛けられ心臓を跳ねさせた2人は、首が軋む音が鳴りそうな動きで振り返った。
「え、やっば。めっちゃ色白! 肌きれい!」
一気に距離を縮める2人組の女性は、露出度の高いナースとポリスの仮装をしていた。
それらが人間界に存在する職業の仮装であることを、ニコアとミシルは知っていた。もちろんこれらの仮装が実際の制服とは違っているということも。
「すごい、本物の天使みたいですねっ」
最初に声をかけてきたナースに続いて、ポリスの女性もにこにこと微笑みながらニコアたちの姿を褒める。
仮装でもなんでもなく本物の天使ゆえに、格好に触れられるたびにドキリとする。
バレたんじゃないかと思う反面、これはあくまで仮装として褒めてもらえているのだと自分に言い聞かせる2人。
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