1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ニコア、そろそろ……」
ミシルはニコアの耳元で声をかける。
「えぇ、もうちょっといいじゃないですか。このお姉さんたちの衣装、手作りなんですって。すごくないですか?」
「それはすごい。けれどこっちも時間が……」
ミシルの気がかりなど露知らず、ナースとポリスたちも「もうちょっといいじゃーん」と引き留めてくる。
ミシルはそれに苦笑し、適当に考えた言い訳を口にした。
「申し訳ない。実はこの後知人と待ち合わせをしていて……そろそろ時間がせまっているから」
ミシルは言いながら視線をチラチラと後方に向ける。
知人との約束などないことを知っているニコアは、ミシルの視線の先を追った。
玩具を見つけた子どものような楽しそうな笑みを浮かべ、こちらに一直線に近づいてくる悪魔が1人。それに気が付いたニコアはミシルの言葉に乗った。
「そ、そうでした! 待ち合わせがあるのを忘れていました! すみません。声をかけてくれてありがとうございました。お話、楽しかったです!」
「えー、マジで行っちゃうの? まぁ約束があるなら仕方ないか」
「そうだね。またどこかで会えたら話そうねっ」
ニコアたちが後ろを気にする素振りが、人間たちには待ち合わせを気にする仕草に見えたのだろう。
ナースとポリスはあっさり手を振って見送ってくれた。
最初のコメントを投稿しよう!