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悪魔から逃げようとしたニコアとミシルだったが、人ごみのせいで上手く前に進めなかった。そうこうしているうちに2人の肩に手が乗った。
2人はびくりと肩を跳ね上げた。
大きなその手に力は込められていないけれど、絶対に逃がさないという圧がある。
こんな人間が多くいる中で戦うなんてどれだけの被害が出るか分かったものじゃない。
それは絶対に回避しなければ。
だったらどうすればいい。
その答えを真っ先に出したのはニコアだった。
「と……トリック・オア・トリート!」
肩に乗った手を振り払うように勢いよく振り返ったニコアは、手を差し出しながら言った。
ミシルは呆れと絶望が混ざった複雑な心境でニコアを見た。
「……、……あっははははは!」
一瞬ぽかんとした悪魔は、ニコアに言われた言葉を理解して腹を抱えて笑い出した。
「あっははははは! 先手を取られちまったなぁ」
悪魔は真っ黒のコートを漁る。お菓子を探して胸ポケットや内ポケットに手を突っ込んだ。
「待ってろよ、さっき人間からもらった菓子がどっかに……あぁ、これだ」
差し出していたニコアの手に乗ったのは、黒いカップケーキだった。目と耳がついているところからして、黒猫を模しているのだろう。
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