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ちょうど次の礼拝で、司会担当の方が急用で教会に来られず、ならばラケルにしてもらうのは、どうか……そんな内容の会話を交わし、わたしはラケルに司会の件を頼んでみた。
「聖書をざっと一回読んだだけなのにいいのでしょうか?」
「大丈夫よ。わたしだって信仰しているわけじゃないのに何度も司会したんだから」
わたしはラケルに教会の礼拝を手伝ってもらうなら、それっぽい服を選ばないと、と思った。ここは金銭的にきついけれども、ラケルにぴったりなゴシック調のお洋服をネットで探してみた。
「ラケル、なにか気に入ったお洋服があったら教えて」
わたしはパソコンに向かう席をラケルにゆずった。これかな、とラケルは黒のゴシックドレスを選んだ。黒のフリルのついた大きな襟……長い丈のスカート、肘のあたりから手首へかけて、径が太くなるフレア・スリーブ。それに大ぶりな銀製の十字架ペンダント
日曜日、ラケルは礼拝堂のいちばん左の最前席に座り、礼拝のはじまる十時半を待っていた。母が……牧師がやはり黒メインのシックな服を着て礼拝堂に入ってきた。
ラケルは立ち上がって目の前のマイクに向かう。
「皆様はじめまして、先日から訳あって、ここの教会でお世話になっているラケルと申します……ご覧のとおりの『天使』です」
礼拝堂は重苦しい空気に包まれた。ドレスの肩甲骨のあたりはほんの少しだけ羽根が出せるように切り、まつり縫いをしてある。──そんなわたしですがよろしくお願いします。
と、ラケルが言うと礼拝堂は拍手が返ってきた。
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