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父と母のCDコレクションから、まずはラケルに聴かせることにした。母はほぼクラシック、父はジャズ・ファン。わたしはどちらも好き。ただ、魂という言葉が気になって、ラケルにはジャズを聴かせてみることにした。
優美なビル・エヴァンスのピアノ、豪放磊落なデクスター・ゴードンのテナー・サキソフォン。
これまでこういう音楽を聴いたことがなかったのだろう。ラケルはジャズのテーマのあとの即興を興味深く聴いている。
「この曲、いや、ジャズはみんなそうだけど、ここから先は、ソナタ形式の展開部のように決まったメロディの演奏ではないの、完全な即興演奏よ」
ラケルは、大きなサキソフォンとその横に子供が描かれたジャケットのCDを裏返す。
「二曲めだから……これは『コンファーメーション』。いまここのメロディはもともとこう作曲されたものではないということ?」
「そうそう。ジャズは提示部のようなもとの曲を、まるで一度ばらばらにしてちがった形にするような、ある意味かなり高度なことをやっているのよ。一瞬一瞬の閃きに賭ける即興で。抑圧されてきた黒人の魂の爆発、みたいなね」
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