3話

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メールを見ながらでも感じる視線に顔を上げると、綺麗な立ち姿のまま私を見つめる金子さんと目が合う。 ……これは…見つめ合っているのか…… 視線をそらすタイミングがないような熱視線を浴びている気がして、数秒間見つめ合ったあと あっ…私が邪魔?と気づいたので、パタッ…パソコンを閉じると 「部長、部内からメールをたくさんもらっているので、戻って確認してから動きます。失礼しますっ」 絶対に落とすまいと、パソコンをぎゅっと抱きしめてドアに向かう。 アクセス制限のない、パソコン……大切な情報が満載だもの…当たり前のことなのに今日は特別に感じる……落とすものか。 「阿部さん。私からも指示メールと、昨日の会議資料をすぐに送るので確認してください」 「承知致しました!よろしくお願いします。失礼します」 いつ、どんなシチュエーションでも、隙のないデキる上司って感じで、本当に尊敬できるよね…白波瀬部長。 私も頑張らないと…… 私は夕方までに、ひとつの営業を部長に提案した。 その他は先輩たちの進める案件のサポートをする。 “着目点はいい。いかに実現するか…明日朝一番に打ち合わせ” そういう旨のメールを白波瀬部長からもらって一日の業務は終了。 そして、今……私は残り野菜と豚こま肉の野菜炒め、ぬか漬けきゅうり、卵焼きという夕飯を食べながら堤副社長にお礼だけは伝えないと……と思っていた。 連絡を取らない方がいい事はわかっているけど、今日のお礼だけはね。
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