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6話
またしてもご馳走になってしまったあと、堤さんは仕事に戻って行った。
私は彼に教えてもらった物件のうち、30分ほど歩けば行けそうなところへ行くことにする。
昼食後、すぐにパンケーキを完食したお腹がパンパンだもの。
訪れたのはフラワーショップで、アレンジメント教室も開催しているお店だった。
入口付近の壁板はレトロな雰囲気のものを選んではあるが、新しいものだろう。
でもそれに違和感がなく、とても馴染んで見えるのは、同じ壁板でテーブルが作られているから。
このテーブルには今はブーケがたくさん置かれているが、アレンジメント教室のテーブルにもなるらしい。
だからかな…そのすぐ奥に手洗い場があるのが見えた。
素敵…とてもシンプルなタイルの流し台。
思わずそこまで行ってしまった私に
「花より、そこが気になりますか?」
とお店の男性が明るく声を掛ける。
「すみません…素敵だったので。これは既製品ではない規格サイズですよね」
「モルタルの流し台を作ってもらったあと、自分でタイルを貼りました。お気に入りです」
よく聞かれるのだろう。
特に不審者のように扱われることもなく、ゆっくり見て…という風に彼は戻って行く。
楽しくなってきた私は、結局堤さんに教えてもらった物件全てをその日のうちに回ってしまった。
愉しかった…でもさすがに…たくさん歩き過ぎた…
家で靴と靴下を脱いだ時、ブーブー……バッグの中から聞こえてくる。
白波瀬部長…
「はい……阿部です」
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