生徒会室にて

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「おい、生徒会。文化祭の予算の件で……て、何してんだ?」 「いい所に来ましたね。今からお茶会をするのですが、一緒にいかがですか?」 「は、はぁ。お前ら期限ギリギリじゃなかったか……?この状況も説明を頼む」 お茶を準備しながら副委員長である千影(ちかげ) (ゆう)と会話する彼は副風紀委員の光翔院(こうしょういん) (よる)である。 彼は晴の弟であり、風紀委員の中でしっかり者のクソ真面目で通っている。……ただし、兄の事になると彼も少し様子が変わってくる。いや、変になるのだ。そんな彼に、生徒会の一人であり阿頼耶(あらや)の弟である巫鬼(かんなぎ) 那由多(なゆた)が耳打ちをしている。 「よう、ブラコンストーカー。しらばっくれてるけど、どうせ盗聴してて見に来たんだろ。お前の兄貴と僕の阿頼耶(あらや)がまたてぇてぇしてるの」 その瞬間、二人の間にしばらくの沈黙が流れる。この長い間から察する事が出来るように、彼がストーキング行為もとい、盗聴をしていたと言うのは紛れもない事実なのだ。だが、彼が兄である(はる)を盗聴しているのは周知の上なのである。 そんな彼を(はる)以外は察している為、生暖かい目をしている。謎の羞恥で追い詰められている(よる)那由多(なゆた)の近くにスッと近づく影。 先程、真顔で撮影を始めていた生徒会の会計、叶雪(かのせ) (るな)である。どうやら彼は(よる)那由多(なゆた)を含め会話ヒソヒソと話し始める。 「俺に聞きたい事あるでしょ……」 「くっ……、ろ、録画はしてるのか?」 「……俺を誰だと思ってるの?」 「「(るな)様仏様」」 「バッチリ高画質で撮れてるから……後、料金よろしく……」 そう言って手を上げ去っていく(るな)に、(よる)那由多(なゆた)は敬礼のポーズしている。そう、彼等は変(態)なブラコン達なのである。 だが、その状況をよく分かっていない(はる)阿頼耶(あらや)だけ、この状況に目を丸くし、はてなマークを付けているが周囲はこの頭のおかしい状況に、慣れている猛者……いや、洗練された訓練を受けている者たちである為、この盗聴、盗撮、売買……数々の変人共の行為状況を軽く受け流しながら速やかにお茶会の準備がされている。 「さて、お茶が出来ましたよ」 「召し上がれ〜」 「いや、天音(そら)はなにもしてないですよね。」 「そうだね、見てただけかな?」 「そうですね?表の方来てくれませんか?」 「今足が骨折したから難しいかな〜」 のらりくらりとかわすこの学園で天才と呼ばれている薬袋(みない) 天音(そら)に、(ゆう)が殴りかろうとするがこれも我らが天使、阿頼耶(あらや)が「優〜やめなよ〜」と、ぎゅっとして優の動きを止める。彼は自分が可愛いことを知っているのである。可愛いは正義。そして、小さいのにこの中の誰よりも武術に長けている事も。 「いてててっ!阿頼耶(あらや)!タンマタンマ!」 「へぇ、流石だね。自分は力を込めず大きい相手を打ち負かす。武術で世界に名をとどろかせてるだけあるよ。」 「でしょ!これ、何個か関節はずれちゃうから人間にかけたらダメな技なんだけど、(ゆう)なら受け止めてくれると思って!」 「遠回しに人間じゃないから大丈夫って言ってんのか!」 「そうだよ!」「そうだね。」 (ゆう)は「クソ……おぼえてろよ」と言いつつ何やかんや関節も外れておらず平然と動いている所を見ると、やはり彼は人間を超えているのかもしれない。そして、普段ならここで(ゆう)VS天音(そら)の争いが勃発しているのだが、そう、(ゆう)阿頼耶(あらや)に物凄く弱い。だからこそ、阿頼耶(あらや)の仲介によりそれすらも無くなっているのだ。天音(そら)もそれを計算して発言をしていたのだろう。そんな仲の悪そうにみえる(ゆう)天音(そら)だが、実は幼馴染で本人達は互いに素直になれず腐れ縁と言っているのも可愛いポイントなのである。 「やっぱり(ゆう)の作った紅茶美味しい〜!」 「そうだね。いつも僕達の好みに合わせてくれてありがとう!」 「いえいえ、お口に合うようで良かったです」 「……このクッキーの程よい手作り感と噛んだ瞬間に甘みが広がって飲み込むのが勿体ないほど美味しい……そして、喉が渇いた時にほんのりと今の季節にぴったりなマロンショコラの香りと共に口当たりのいい紅茶の味が舌を満たしてくれて本当に美味しい……」 食レポと言わんばかりの(るな)の言葉にクッキーを作った(はる)も紅茶を淹れた(ゆう)も嬉しそうな笑顔を浮かべる。(るな)は食べる事が好きな上に解析までする為、饒舌に話してしまうと言うのは建前で、甘い物が大好物なのである。その為、お菓子やお茶等が入ると必ず(るな)の手に渡るという役得にもなっているのだ。 阿頼耶(あらや)(はる)(るな)は素直に(ゆう)にお礼を言う。優も嬉しそうに笑顔をうかべ紅茶を嗜むが、この学園には素直じゃない奴らも多いのである。 「味もうちょい濃い方が良かった。でも、まあいいんじゃない?」 「そうだね。美味しいけど、砂糖をもう少し貰おうかな。角砂糖5個くらい」 「お前ら(ゆう)に失礼だろ……」 「そうだな」 那由多(なゆた)天音(そら)は地味な難癖をつけ、それを夜がつっこんでいると突然低い男の声が聴こえる。その方向に皆が振り返ると、ヒヨコをちょこんと乗せた水色髪の青年が生徒会室のソファーに腰掛けている。この、存在感を消して侵入してきた彼は風紀委員長の鸚焼(おうあけ) 月讀(つくよ)である。彼は天音(そら)と同じく天才と呼ばれていて、二人合わせて天才組と呼ばれているのである。 「やぁ、こんにちは月讀(つくよ)さん。もしかして僕に用事があるのかな?」 「そうだ。前に渡された地域資料について少々疑問な点があってな。そして、別件でこの学園で実験したい事があってな。どうだ、那由多(なゆた)も含め実験してはみないか?」 「いいね。やろうか」「それ、面白そうじゃん」 月讀(つくよ)天音(そら)那由多(なゆた)からその言葉が出た瞬間、(はる)の表情がスッと変化し『会長モード』の顔となり、周囲も少しだけピリついた空気になる。 「やめろ。お前達」 先程まで可愛い雰囲気を出していた(はる)が、なぜ今厳しい言葉をぶつけたのか……それは、この三人が集まると大体ろくな事が起こらないのだ。無差別に生徒を実験材料として扱い、早く止めなければ被害届が止まらなくなるサイコパスの中のサイコパス集団の為、彼達は『三狂(さんきょう)』と呼ばれている。 そんな三狂(さんきょう)に、文化祭近くのこんな忙しい時期にトラブルを起こされては仕事も増やされてしまいひとたまりもない。 そして晴に怒られそうになると、普段騒々しい彼等も大人しく言う事を聞くのだ。だが、彼等が恐れているのは会長モードではない。会長モードはあくまで警告なのである。 「今、暴動一つでも起こしたら僕もちょっとだけ許せないかな?」 ふっと笑顔に戻りこの言葉を三狂(さんきょう)に……いや、この場の全員に向けていっているのだ。周りの温度が幽霊でも出たのかと言うくらい冷めていて『ヒェッ』という言葉が各々から聞こえてくる。 そう、彼が本当に怒った姿はいつも笑顔で怒らない人間が怒った時をそのまま体現した様な恐怖であり、「その後、彼の姿を見たものはいない」というオチが実際に起こっていたりもするのだ。 綺麗なバラには刺があると言う言葉は彼にピッタリなのだと書いている作者もそう思わざるを得ない。 静まり返った部屋の中、空気を壊すかのように優が手を叩く。 「さて、皆さん。冷めないうちに食べてください。(はる)も脅しすぎですよ」 「えぇ、脅してないんだけどな……」 全員から「嘘つけ!」という総ツッコミを受けそうな言葉を吐いているが、彼は本当に天然でそれをしているのである。(はる)は誘拐された時、犯人と呑気にお茶を飲んでいたり月を女の子と勘違いしたりするくらいの天然なのである。その為、この発言も確実に本人は脅しているつもりは無いのだ。だからこそ、許せないと言う言葉も全く嘘では無いのだ。 そんな何とも言えない空気をまた壊すように扉が開き明るい元気な声が聞こえてくる。 「あ、(よる)月讀兄(つくよにい)ここにいたんだ!」 「いいところに来たな。丁度、生徒会が茶会を開いているんだ。(ひかる)もどうだ?」 「え!?いいの!やった〜!」 彼、夏希(なつき) (ひかる)も参加すると聞いたその瞬間、(よる)(ゆう)、今まで静観していたはずの(るな)までもが頭を抱える。皆、別に茶会に一人増える事を憂いている訳では無い。規律を守るという行動を一切したことが無い風紀委員という名だけの問題児集団が集まったからなのである。 月讀(つくよ)(ひかる)(よる)で形成されている風紀委員は『狂乱動物園(きょうらんどうぶつえん)』と呼ばれている程騒がしく風紀委員は一般生徒より風紀を守らない事は、この学園では一般常識となっているのである。 「こいつらが悪さしたら俺が連れて帰る。悪いな」 (よる)月讀(つくよ)(ひかる)に釘をさしながら本気で申し訳なさそうに生徒会に謝っている。(よる)は兄の(はる)さえ絡まなければ本当に真面目なのである。 「俺達何もしてないのにこの言われようだよ!心外だよねー!月讀兄(つくよにい)!」 「ふむ。だが、日頃の行いが悪いのもまた事実ではあるな」 「分かってるなら頼むから大人しくしていてくれ……」 この様に、彼等は狂乱動物園(きょうらんどうぶつえん)と呼ばれているが、ほぼ(よる)は巻き添いを食らっているだけなのもこの会話でお察し頂けただろう。だが彼等の本領……本性が顕になるのはここからなのである。 「あ!!(るな)(はる)(よる)が███ってなる████の同人誌描きたいんだけど!!」 「……(ひかる)。この場所でその発言するのはやめて」 「え!!でもさ████に必要な資料と人手が足りないから!いでっ!!」 「何するのさ!(よる)(るな)!」と言いながら二人にはたかれた頭を撫でている光は同人誌を作っていてよく締め切り前になると、この二人に協力を仰ぐのだ。 「そう言えば(るな)のちょっとあれな同人誌描いたよ!」 「……は?俺は、自分を題材にされるの、地雷って、言ってるよね。」 そう言って(るな)は秒で(ひかる)をご都合主義で出てくる十字架に括り付け火を付けようとする。そう、ここはギャグの世界線。何をしようとご都合主義なのだ。大体、燃やされても平気で戻ってくるような奴らばかりなので安心してみていられるのである。 「(るな)、待つがいい。流石にこの場所を燃やすと生徒会が迷惑だろう」 「……確かに」 ちらっと背後を見ると警戒態勢の(るな)以外の生徒会が消化器や反省文用の紙、ハリセンや何かやばそうな薬剤等、色々持っている。彼ら生徒会も仇なすなら身内だろうが仲がよかろうが容赦しない事で有名なのである。 そもそも、まともな人間がこの学園に居ると考える方が間違いなのだ。その証拠に今からまともそうな事を言っていそうな月讀(つくよ)の言葉。だがこの後に 「燃やしやすいように特別室と粉塵を用意してやろう」 「僕、火薬の粉なら今だせるよ」 「あれ?俺いつの間にか人権まで無くなってる?」 と、月讀(つくよ)に続き天音(そら)までノリノリになってそんな事を言い出す始末。普段ボケに徹している(ひかる)もこれにはショボン顔で突っ込まざるを得ない。
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