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   ある真夜中、街灯の下でハロルドは美しい人間に出会った。キョロキョロと何かを探すように周りを見渡し溜息を吐いたその人物は、街灯のオレンジ色の光の下でも分かるほどハッキリとした綺麗な金髪をしており、服も真っ白でハロルドは天使でも見てしまったのかと思った。 「どうした?こんな時間にあんたみたいなのが出歩いてると危ないぞ?」  こんなに美しい人間が夜道を歩いていて、今、襲われていないのが不思議なくらいだった。 「あなた……」 「なんだ?俺の顔に何か付いてるか?」  不思議そうにじっと自分の顔を見つめる綺麗な碧眼に、ハロルドは眉を顰めた。 「……いえ、なんでもありませ────」 「おい、怪我してるじゃないか。何してたんだ?まさか、襲われたのか?」  言葉を遮り、ハロルドは引っかき傷のついた手を指差した。 「いえ、ただのかすり傷です。猫を追っていて、全然捕まってくれなくて」 「猫?白猫か?白猫ならさっき……」 「あ、いえ、今日はもう諦めます。ご親切に、どうもありがとうございます」  ここに来る前に白猫を見かけたハロルドは身を翻して探しに行こうとしたが、その行動は静かな声音に制止された。「では、おやすみなさい」と金の長い髪がさらりと去っていく。 「待ってくれ!俺はハロルド、あんたは?」 「私はルシュカ……、どうか忘れて」  憂いに満ちた表情でルシュカは角の向こうに消えた。 「おい、どういう意味……」  ルシュカを追ってハロルドは路地を曲がったが、不思議なことにそこに人の姿はなく、あったのは、いつもと変わらぬ暗闇と静けさだけだった──。
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