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 ◆ ◆ ◆ 「……ド……、おい!ハロルド!」 「うおっ!」 「ぼーっとしてっと資材の下敷きになるぞ?」 「あ、ああ、すまない」  建設現場で働くハロルドは同僚の怒鳴り声で我に返った。昨夜のことを思い出していたのだ。ルシュカの姿や表情を思い出し、危うく降りてくる鉄骨の真下に立つところだった。 「ハロルド、なんで、今日はそんなにぼーっとしてるんだ?女に振られでもしたか?」  慌てて資材の下から移動したハロルドの隣に立った同僚がニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら彼の背中を軽く叩いた。 「いや、なんでもない、ただ……」  突然、ハロルドの動きが止まった。 「ちょっと、すまん」  ある一点を見つめたまま、ハロルドは同僚から離れ、歩みを進めた。いや、正しくは後を追っていた。 「ルシュカ!」 「……」 「ルシュカ、なんで、こんなところに?また猫を探してるのか?」 「今日は別の用事で……」    赤いレンガの倉庫横、真っ白な服に金の髪はとても目立った。ハロルドが声を掛けるとルシュカは立ち止まり、真顔に近い表情で答えた。 「その用事、もう済んだか?」 「ええ、まあ、そうですね……」 「俺も、もう少しで仕事が終わるんだ。一緒に飯でも食いに行かないか?」 「食事……」 「ああ、ここで待っててくれ。すぐに戻って来るから」  ルシュカからの返事はない。しかし、ハロルドは「待っててくれよ?迎えに来るから」とにっこりと笑って現場に戻って行った。 「ハロルド……」  ハロルドが走って行った方を見て、ルシュカは自分の胸に当てた右手をギュッと握りしめた。
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