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ウェルスマー公爵は、その地位と順調な仕事ぶりで貴族社会では
安定した日々を過ごしているのだが、ひとつだけ悩み事があった。
次男のローマンが元気過ぎるのだ。
栗色の髪に緑の目に整った顔立ちと優秀な頭脳。
彼は12歳にして社交デビューを果たしたほどだった。
しかも、その後は最短で単位を取り、飛び級もした。
そうして余った時間で世界を旅して回って、帰国する度に奇妙な
異種族を連れ帰ってくる。
それらを住まわせる為に、屋敷の庭以外に特別な庭園があるほどだ。
群れをはぐれて孤独になっていた精霊、雇い主が死んでしまった妖精。
特に妖精は転送魔法を持ち得ているので便利だったが、なにしろ階級が
低い種族と交流する時点で貴族としては異質だ。
あまりにも奇行過ぎて縁談がまとまらないが、資格をいくつも取得して
学年トップで卒業した彼に、家族は文句も言えなかった。
しかも数時間しか寝なくても平気なほど健康体で、貴族の着る寝巻を
普段着代わりにして庭園で過ごすのだ。
部屋着の服や正装が汚れるよりはマシかと、貴族にありまじき行為を
誰もが目を瞑った。
正装して社交の場に出るとマナーはしっかりしていたからだ。
「良い縁談も、地位もいらない、自分だけの時間が欲しい」
そんなローマンの望みは、家族には呆れられていた。
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