神代の二人

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女は男のその純粋な愛の形に感謝し、たとえそれが自分の本当に望んだ姿とは異なっていても、男が自分を思い描き、心を込めて持ち来たったものは全て、宝物として大切に受け取ってきた。 神代の時代、それが男と女の姿であった。お互いが想い、想われ、互いを受け入れ尊重し合うことで、一つの円として存在していたのだ。それが神代における常であった。 しかし、幾億年という気の遠くなるような時の流れの中で、その完璧な円は気付かぬうちに少しずつ、当の本人達ですら気づかない程に本当少しずつ歪みはじめていた。 ✢✢✢ 花々の最期を見て涙する女の姿に、男は深い混乱と苦悩を覚えていた。なぜなら、このような出来事は、彼らの間に流れた長い時の中で、初めてのことではなかったからだ。 過去にも幾度となく、女の願いを形にしようとした結果、その時は、女は感謝と共に男のした事に受け取りはしたが、その一時の喜びの後には、より深い悲しみを生み出してしまうことがあったのだ。
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