神代の二人

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その夜、女は神の元に出向き切実に願った。 「どうか私達を引き離してください。彼が私を想ってくれる事で、彼自身を傷つけてしまうから。私はもう彼に傷ついてほしくないのです。どうか、この輪を断ち切ってください。」 その声は、柔らかではあったものの、確固たる強さが宿っていた。神は、その声から女の意志の硬さを感じ取っていた。 翌日、男と女は、互いの形が歪に割れていることに気づいた。それを見て、女は、神が自分の願いを叶えてくれたのだと知り、これで男を傷つけることはなくなったとほっと胸を撫でおろした。一方の男は、女が自分の元を去ったのだと理解した瞬間、その胸に深い悲しみが満ちていった。まるで大地が裂けるような痛みと共に、自分の抱えた苦悩が、最愛の人を遠ざけてしまったのだと悟ったのだ。 しかし男は、その悲しみにただ打ちのめされるだけではなかった。すぐさま旅の準備を整え、女を探し出す決意を固めた。どれほどの時が流れようとも、どれほどの試練が待ち受けていようとも、必ずや女を見つけ出し、再び完全な円を描くことを誓って―。
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