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「ちち様。早くこっちにきてください。今日は、かか様も一緒にかくれんぼうをして遊びましょ」
月子が天皇にそうお願いすれば、もはや天皇もただの子煩悩な父として、皇后や時にはそばに仕える女房を巻き込んでかくれんぼうに興じた。またある時は、
「ちち様は、この子ね」
と、人形を渡され、月子が飽きるまで人形遊びをして楽しんだ。日頃激務に追われる天皇にとっては、月子と過ごすこの時間が何よりもの癒しであり、月子もまた、いつも一生懸命遊んでくれる父親が大好きであった。
だから、天候が公務のために清涼殿に戻る時には、「ちち様、行かないで〜」と泣き叫ぶ月子を女房達があの手この手で引き離す姿が、この頃の弘徽殿の風物詩となっており、周りの妃や女房達も、そんな姿を微笑ましく見守っていた。
が…。
その風物詩を柱の陰から苦々しく睨みつける一人の妃がいた。
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