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孤独な少女
桜庭みのりは孤独な少女である。
「花澤くん、ピアスは校則違反だよ」
「あっ、委員長……。ごめんごめん。
次から気をつけるわ」
苦笑いを浮かべて花澤はみのりから離れていく。
チラッと振り返った視線は鬱陶しいと訴えていた。
孤独でも構わない。
みのりは不真面目なことが大嫌いだった。
みんながちゃんとしていれば
喧嘩など起こらない。
引きこもりの生徒など現れない。
だから、みのりは学級委員長として
クラスの平和と秩序を守ろうとしていた。
だから、今日もみのりは校則違反を取り締まる。
移動教室から帰ってくると誰かの話し声が
聞こえてきた。
「マジで桜庭うぜぇ。ピアスしてきたくらいで
ガミガミ言ってきてさ」
自分の名前が出てきて自然と足が止まった。
「ほんとそれな。オレなんかこないだテストのとき
カンペ見てたら桜庭がチクりやがって反省文書かされたんだぜ」
胸にトゲが刺さったかのような錯覚。
「ホント、桜庭消えて欲しい」
その言葉がさっきよりも深く胸に突き刺さった。
……私だって、頑張ってるのに。
強く唇を噛み締める。
「邪魔」
振り返ると髪を金髪に染めた男子が立っていた。
無表情でみのりを見下ろしている。
青野涙。
何度かその髪色を注意したことがある。
「あ……ごめん……」
みのりは泣きそうになっているのを気づかれたくなくて早足で涙の横を通り抜けた。
誰にも屈せず、校則違反を注意するみのりは
鬱陶しい存在だろう。
だが、強く見えるみのりにも心がある。
みのりは柱の陰に座り込んでスカートに顔を
うずめた。
心の傷口がズキズキと痛む。
だから私には友達がいないんだろうな。
けど私はあの人みたいな犠牲を出したくないから。
みのりは顔を上げて涙を拭く。
だから、今日も学級委員長として頑張ろう。
みのりは意識的に笑みを浮かべて教室に戻った。
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