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恋心を育てる
スマホのアラームが鳴りみのりは
素早く停止ボタンを押した。
眉間に皺を寄せながら起き上がり、
カーテンを開き、太陽の光を浴びる。
昨日の出来事が頭をよぎり
胸にモヤがかかるような感覚がした。
考えていても仕方がない。
みのりは素早く制服に着替え、階下に降りていった。
「おはよう」
教室の扉を開けると何人かのクラスメイトが
みのりに声を掛けてきて固まってしまう。
「え……おはよう」
いつもなら誰1人として声を掛けてこないのに。
みのりは気づいていないが
彼女の態度が随分と柔らかくなったことで
皆話しかけやすくなった。
友人になりたいというクラスメイトが
現れ始めたのだろう。
「おう、みのり。おはよ」
昨日あんな態度をとってしまったばかりだと言うのに
涙はいつもと変わらぬ笑みを浮かべる。
「お、おはよう……」
席に着くとあの女の子の言葉が頭の中で
グルグルと回り始めた。
本当に彼女なのかな?
「みのり、昨日からなんか変だけどどうしたんだよ」
「別に何でもないよ」
「何でもないって……
昨日挨拶を無視したくせによく言うよ」
「……それは悪かったけど……。
……ねえ、相沢さんって涙くんの彼女なの?」
チラリと涙の方を見ると呆気に
取られたような表情をしている。
「は?? 別に彼女じゃないよ。
アイツと男友達とでカラオケに行ってたんだよ。
あ、もしかして嫉妬してたのか?」
「嫉妬なんて……」
してないと言いかけたとき。
あれ?
じゃあなんで私は涙くんにイライラしてたの?
彼女がいるかもしれないって思ったら
胸がキュッとなって、置いて行かれたみたいな
気持ちになった。
その感情はまるで。
……もしかして、私は涙くんに恋をしてる?
そう自覚すると鼓動が早まり
心臓の音が聞こえてくる。
「みのり?」
心配そうな涙に愛しい気持ちが湧き上がってきて
みのりは確信した。
私は今、恋をしている。
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