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「この問題が分かる人いるか?」
教師がクラスをぐるっと見回す。
しかし中々手を挙げる者はいない。
「はい」
みのりが真っ直ぐに手を挙げると教師は
みのりを指名した。
「この英文はwereがbe動詞になっています」
「さすが桜庭だな、正解だ。
みんなも桜庭を見習えよ」
教室の空気はしらけている。
当然だろう。いつも疎まれている学級委員長が
自分たちより勉強ができるのは面白くない
そう思う者もいるだろう。
椅子に腰を下ろすと隣の席の涙が
机にうつ伏せになって寝ていた。
「青野くん」
優しく肩を叩くが涙はびくともしない。
「青野くん!授業中だよ!」
そう呼びかけると、彼は少しみじろぎをして
瞼を擦り、目を開けた。
「うるさいな。起きてるよ」
「嘘、しっかり寝てたじゃない」
みのりはため息をつき、ノートにペンを走らせる。
「桜庭さ、昨日泣いてただろ?」
その言葉にペンが止まった。
まさか、見てたの?
「な、泣いてなんかっ」
「まあいいけど。
桜庭はさ、真面目すぎんだよ。だから敵を作る」
「……そんなこと私だって分かってるよ」
声が沈むのが自分でも分かった。
不良には分かんないでしょうね。
この気持ちは。
自分の気持ちは自分にしか分からない。
みのりの心にある古傷が思い出したように
痛みを孕んだ。
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